唐揚げが食べたい。
ここ数日、そればかり考えている。
近所の弁当屋の唐揚げがめちゃくちゃおいしいことに気づいてしまったからだ。
そこの唐揚げは、けっこうしっかり揚げてあり、時間がたってもカラッと感が失われない。
肉は丁寧に下ごしらえされたもも肉で、臭みはゼロ。
しょっぱくもなく、薄味でもない、酒の風味がきいたまさに絶妙な味つけ。
そしてここが一番大事なのだけれど、肉と脂身の配分がちょうどいい。
肉部分だけだとパサパサになりがちだし、私はもともと鶏の脂身が苦手なので、
脂身が多いなんていうのは論外だ(でも、そういう唐揚げは意外に多い)。
唐揚げは、コンビニだろうと居酒屋だろうと、わりとどこにでもある食べ物だけれど、
「これぞ」というものに出会うことは少なく、
自分から買って食べることはほとんどなかった。
でも唐揚げが嫌いだったわけではない。
むしろ、心のどこかで理想の唐揚げを追い求め続けていた。
今までのナンバーワンは、実家で出てくる揚げたてのザンギだった。
鶏の唐揚げは、北海道では「ザンギ」と呼ばれていて、
東京で食べる唐揚げとは衣と味付けがちょっと違う気がする。
今でも母は、私が帰省するとザンギを揚げてくれる。
そういえば、母はザンギをつくるとき、まず脂身を丁寧に取り除いていた。
東京に出てきて10年。やっと理想の唐揚げを見つけた。
近所の弁当屋にある、というのがまたいい。
なんとか鶏を使った〜みたいな、高級なのが美味しいのは当たり前。
そこの唐揚げは、ボリュームがあるのに1個50.25円なのだ。
この半端な価格設定、たまらない。
なのに、弁当屋が休みだったり、唐揚げだけ売り切れだったりして、
この2週間、その唐揚げを食べられていない。
ショーケースの中に明らかに唐揚げはないのに、
お店のおばちゃんに「唐揚げ、ありませんよね?」と、
奥に予備が取り置いてあることに望みをかけて聞いたこともある。
でもやっぱり、ないものはないのだ。
「今日は売り切れちゃったのよ、ごめんなさいねえ」と言われ、
「ですよねえ」と苦笑いで引き下がる。
悲しい。唐揚げ食べたい。