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映画もよかった。めずらしい。

映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

とてもよかったです。

原作を読んでいても、読んでいなくても満足できる

めずらしいパターン。

(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

 

おおまかなストーリーは一緒。

9.11のテロで父親を亡くした少年オスカー・シェルが

遺品の鍵に合う穴を探して、

ニューヨーク中の「Black」という名前の人を訪ね歩く。

 

原作と違うところも

(親子三代の話はコンパクトになり、母親に男の影はない)

映画にまとめるならこうだな、と納得できた。

淡々とオスカーの目線で語る構成は踏襲されていて

心配していた「お涙ちょうだい演出」は無し。

でも、圧倒的な悲しみを飲み込みきれず、もがくオスカーを見ているだけで

どばどば涙が出た。

 

原作は、個性の強い端切れでつくられたパッチワークのカーペットみたいで、

独特の文体と重層的なストーリーに、混乱しながらもぐいぐい引き込まれる。

映画は、パッチワークの布をほぐして、その糸できれいに編みなおした感じ。

そうすることで、父親をなくしたオスカーのつらさが、

ストレートに伝わるストーリーになっていた。

特に、当日の電話のシーンは映像で見るとより強く胸をうつ。

こぼれたヨーグルト。窓からの日差し。天気の良い日だったんだな。

 

映画を観ながら、去年3.11の地震の少しあとで、

ライターの古賀さん

「悲劇が起こったときには、政治家や社会学者の発する言葉じゃなくて

小説家が書く物語が必要なんじゃないかと思う」

と話していたのを思い出した。

物語で、テロがなくなるわけではない。

でも、遺族の気持ちがすこしなぐさめられ、

オスカーの悲しみを共有した世界中の読者が

もう二度とこんなことが起こりませんようにと願う。

それだけで、空気はすこし変わる。

それは、物語にしかできないことなのだと思う。

2012.3.13

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