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Blog Archive : 2012年3月

映画もよかった。めずらしい。

映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

とてもよかったです。

原作を読んでいても、読んでいなくても満足できる

めずらしいパターン。

(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

 

おおまかなストーリーは一緒。

9.11のテロで父親を亡くした少年オスカー・シェルが

遺品の鍵に合う穴を探して、

ニューヨーク中の「Black」という名前の人を訪ね歩く。

 

原作と違うところも

(親子三代の話はコンパクトになり、母親に男の影はない)

映画にまとめるならこうだな、と納得できた。

淡々とオスカーの目線で語る構成は踏襲されていて

心配していた「お涙ちょうだい演出」は無し。

でも、圧倒的な悲しみを飲み込みきれず、もがくオスカーを見ているだけで

どばどば涙が出た。

 

原作は、個性の強い端切れでつくられたパッチワークのカーペットみたいで、

独特の文体と重層的なストーリーに、混乱しながらもぐいぐい引き込まれる。

映画は、パッチワークの布をほぐして、その糸できれいに編みなおした感じ。

そうすることで、父親をなくしたオスカーのつらさが、

ストレートに伝わるストーリーになっていた。

特に、当日の電話のシーンは映像で見るとより強く胸をうつ。

こぼれたヨーグルト。窓からの日差し。天気の良い日だったんだな。

 

映画を観ながら、去年3.11の地震の少しあとで、

ライターの古賀さん

「悲劇が起こったときには、政治家や社会学者の発する言葉じゃなくて

小説家が書く物語が必要なんじゃないかと思う」

と話していたのを思い出した。

物語で、テロがなくなるわけではない。

でも、遺族の気持ちがすこしなぐさめられ、

オスカーの悲しみを共有した世界中の読者が

もう二度とこんなことが起こりませんようにと願う。

それだけで、空気はすこし変わる。

それは、物語にしかできないことなのだと思う。

2012.3.13

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こんなに危なかったのか。

 

ワイキューブ元社長安田佳生さんの

『私、社長ではなくなりました。 』を読んだ

 


私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日

 

自分が新卒で入社した会社の

壮絶なキャッシュ・フロー経営の内幕が明かされていた。

あわわわわ。

利益が出ていないのに、借り入れたお金をブランディングと採用にどんどん使う。

そう、『一億円かけて十人しか採用できなかった年もある』とは

私の代のことですね。

そして、ワークシェアという名の自宅待機をきっかけに辞めた社員です。はい。

 

全体を通して、

無茶な施策をうって、失敗するという展開の繰り返しなのだけれど

文章のうまさと安田さんの絶妙にねじれた発想がおもしろくて

するすると最後まで読める。

 

そして、あとがきでほろりとした。

つらいことも多かったけど、正直言って楽しかったという安田さんの告白。

 

− 大好きな人たちに囲まれながら、大好きなオフィスで仕事をする。

これ以上の幸せがあるだろうか −

 

私も本当にそうだった。

豪華なオフィスは、無駄じゃなかったよ、安田さん。

あの場所でみんなと働くのはとてもすてきなことで、毎日会社に行くのが楽しかった。

社会人、そして仕事は楽しいものなんだと、新卒の会社が教えてくれてよかった。

 

そんなワイキューブの事業を継いだ

カケハシ スカイソリューションズではいま、

ミートボウル(meet bowl)というおもしろい採用方法を提案している。

 

得意なことで勝負する。新しい就活スタイルを提案するサイト。

http://www.meet-bowl.com/

 

雀鬼採用、ご指名No.1採用、強豪チームの万年補欠採用、など

エッジのきいた応募条件で、これまでの採用ではこぼれてしまう才能に光をあてる試みだ。

 

安田さんはもう社長じゃないけれど、

ユニークなマインドは脈々と受け継がれている。

やっぱりここは「特別な会社」なんだと、私は思う。

2012.3.8

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